「メトホルミンがダイエットに良いと聞いたけど、具体的のどのような効果があるの?」
「メトホルミンを使ってダイエットすると、どういったメリットがあるの?」
メトホルミンは、糖尿病の治療薬として承認を受けている薬です。最近では、ダイエットや健康維持にも効果があることで知られています。大きく注目されているのもあり、メトホルミンを使ったダイエットを行ってみたいと考えている方も多いのではないでしょうか。
今回は、メトホルミンがダイエットに効果的な4つの理由を解説します。長寿やコロナ後遺症などダイエット以外に期待できる効果も紹介しているので、参考にご覧ください。
メトホルミンに期待できる4つのダイエット効果

メトホルミンがダイエットに良いのは、以下の4つの効果があるためです。
- 過剰な食欲を抑える
- 満腹感を持続させる
- 糖分の便中への排泄を促進させる
- 筋肉量を増やす
それぞれ詳しく解説します。
過剰な食欲を抑える
メトホルミンには、過剰な食欲を抑える効果があります。これは、GLP-1の分泌量を増やすためです。GLP-1とは、インスリンの分泌を促進する働きがあるホルモンのことです。
私たちの体は、血糖値が上がると、GLP-1の働きによってインスリンの分泌が促され、血糖値が下がるようにできています。このGLP-1は、痩せるホルモンともいわれており、満腹中枢を刺激する働きもあります。
また、メトホルミンには成長分化因子15(GDF15)の発現と分泌を誘導する働きがあることも特徴です(1)。成長分化因子15の増加も、食欲を抑制する効果を発揮します。
これらの働きがあるため、メトホルミンは過剰な食欲を抑えるのに効果的なのです。
満腹感を持続させる
メトホルミンには、満腹感を持続させる効果があります。GLP-1には、食欲を抑える効果だけでなく胃の運動を緩やかにして食べたものが胃に長くとどまるようにする働きもあるためです。
食べ物が胃に長くとどまると消化がゆっくりになるため、満腹感が持続しやすくなります。その結果、食べる量を減らし余分なカロリーを摂取しなくて良くなります。
糖分の便中への排出を促進させる
メトホルミンには、血液中に含まれている余分な糖分の便中への排出を促進する働きがあります。もともとメトホルミンは、肝臓での糖新生を抑制したり筋肉や脂肪組織で糖の取り込みを促進したりして血糖値を下げる薬として知られていました。
糖新生とは、糖質以外の物質からブドウ糖を作る反応のことです。近年の研究により、メトホルミンが便中への糖の排出を促すことが分かりました。この効果により、無理なくカロリーカットが可能です。
筋肉量を増やす
メトホルミンには、筋肉量を増やす働きがあります。ダイエットをすると、どうしても脂肪と一緒に筋肉も減りがちです。筋肉が減ると基礎代謝量が減少し、リバウンドしやすくなります。
しかし、メトホルミンは筋肉量を増やしてくれるため、ダイエット中でも筋肉量を維持することが可能です。
高齢者を対象に行われた研究では、メトホルミンを1日2回、16週間にわたり服用してもらったところ、握力や歩行速度などが改善されたとの結果が出ています(いずれもp<0.05)(2)。
メトホルミンを使用してダイエットをするメリット

メディカルダイエットに用いられる薬には、メトホルミン以外にリベルサスやオゼンピックなどのGLP-1製剤、フォシーガなどのSGLT2阻害剤などもあります。
それぞれにメリット・デメリットがありますが、多くの選択肢がある中でメトホルミンでダイエットをするメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。
「我慢するダイエット」をしなくても良い
メトホルミンは、ごく自然に食欲を抑えてくれます。食べたいものを我慢しようと必死になる必要はありません。
胃の内容物が腸に送り込まれるのもゆっくりになるため、満腹感も持続します。食欲が減少し、食べる量が減るため無理なくダイエットを続けられるでしょう。
筋力の低下を防げるのでリバウンド防止につながる
メトホルミンには、筋肉量を増加させる働きがあります。通常、ダイエットを行うと脂肪と一緒に筋肉も落ちてしまうのが一般的です。
筋肉量が落ちると基礎代謝量が下がり、リバウンドしやすい状態になります。しかし、メトホルミンを服用すると筋肉量の低下を防げるため、リバウンド防止につながるのです。
痩せるだけでなく「引き締まった体」を目指せる
痩せやすくするだけの薬は他にもありますが、引き締まった体を目指せるのはメトホルミンだけです。
筋肉量を維持しながら体重を落とせるので、「ただ細い体」ではなく「運動したときのような体」を手に入れられます。
低血糖の副作用が出づらい
メトホルミンには血糖値を下げる効果がありますが、低血糖の副作用が出づらいことが特徴です。
これは、メトホルミンを服用してもインスリンの分泌を直接促すことがないためです。インスリンの分泌が促されると、血液中のブドウ糖が細胞に取り込まれて血糖値が下がります。
このとき、血糖値が下がりすぎてしまうと、低血糖になる恐れがあります。低血糖の状態になると、冷や汗や動悸、意識障害などの症状が出ることがあるため注意が必要です。
メトホルミンは、インスリン分泌に直接関与していないため、低血糖の副作用が出にくくなっています。
価格が安い
メトホルミンは、リベルサスやマンジャロなどのGLP-1受容体作動薬と比べると、価格が安いことも大きなメリットです。
メディカルダイエットは自費診療となるためクリニックによって価格が異なりますが、1カ月あたりのおよその相場価格は以下のとおりとなっています。
メトホルミン | 2,000~4,000円 |
リベルサス | 8,000~50,000円 |
マンジャロ | 15,000~65,000円 |
また、メトホルミンは古くから使われている薬のため、どのような効果があってどういった副作用が起こる可能性があるのかもある程度知り尽くされています。そのため、メトホルミンは安心して使えるダイエット薬だと言えるでしょう。
メトホルミンを使用したダイエット効果に関する文献

「メトホルミンで本当に痩せられるの?」「メトホルミンを実際に服用した方のダイエット効果が知りたい」と思われている人もいるでしょう。ここでは、メトホルミンを使用した研究結果を3つ紹介します。
肥満がある非糖尿病患者にメトホルミンを使用した研究
糖尿病の疾患がなく、BMIが27以上の肥満である154名を対象に、6カ月にわたってメトホルミンが投与される研究が行われました。このときのメトホルミンの投与量は、1日2,500mgまでです。
この研究では、メトホルミンを投与をしたグループの体重減少の平均値が5.8±7.0kgであるとの結果がでました(3)。なお、メトホルミンを投与しないグループの体重も検証されましたが、こちらは0.8±3.5kgの減少にとどまっています。
この研究により、メトホルミンには肥満患者の体重を自然に減らす効果があることが分かりました。
抗精神病薬を使用している非糖尿病患者にメトホルミンを使用した研究
抗精神病薬を服用すると、副作用で体重増加が見られることがあります。抗精神病薬とは、主に統合失調症の治療に用いられる薬のことです。
糖尿病がなく抗精神病薬を服用している方がメトホルミンを服用したところ、服用していない方と比べて有意な体重減少が見られました(4)。
メトホルミンは、抗精神病薬の服用により明らかな体重増加が見られる方で顕著な減量効果を発揮します。
統合失調症および統合失調感情障害がある肥満の方にメトホルミンを使用した研究
統合失調症および統合失調感情障害がある肥満の方148名を対象に、メトホルミンまたはプラセボを16週間投与する研究が行われました。プラセボとは、有効成分が入っていない偽薬のことです。
メトホルミンを投与されたグループでは平均で-3.0kg、プラセボを投与されたグループでは平均で-1.0kgの体重減少が見られました(5)。
メトホルミンは、統合失調症や統合失調感情障害がある方の肥満による影響を軽減する可能性があります。
メトホルミンに期待されているダイエット以外の効果

メトホルミンは、ダイエット効果を示したり血糖値を下げたりするだけの薬ではありません。近年の研究では、以下の効果があることも分かっています。
- 寿命を延ばす
- 新型コロナウイルスの後遺症を防ぐ
- 認知症を予防する
寿命を延ばす
メトホルミンには、寿命を延ばす効果があることでも注目されています。寿命と大きく関与しているのが、テロメアです。テロメアは染色体の末端にある構造で、細胞分裂の度に短くなります。テロメアの長さを一定に保てなくなると、細胞は寿命を迎えます。
メトホルミンは、このテロメアを延ばす働きがあるのです。糖尿病患者のデータにはなりますが、メトホルミンを服用している方では、服用していない方と比べてテロメアの短縮を減らすことができたとの結果が出ています(6)。
新型コロナウイルスの後遺症を防ぐ
新型コロナウイルス感染症は、症状が発症したときに重症化するリスクがあるだけでなく、発症して数週間から数カ月ほど症状が残る後遺症が起こることも問題視されています。
コロナ禍に入ってから、メトホルミンは新型コロナウイルス感染症の後遺症を防げる可能性がある薬としても注目されるようになりました。
メトホルミンを服用していた方では、プラセボを服用していた方と比べて長期COVIDを発症する可能性が40%も低かったのです(7)。
認知症を予防する
メトホルミンは、認知症の予防効果がある可能性も期待されています。認知症は、進行性であり完治する方法は今のところありません。2型糖尿病の治療薬であるメトホルミンは、認知症に有益な働きをもたらすことが分かっています。
情報の伝達や処理に関わっている神経細胞のニューロンのアポトーシス(細胞の自然死)を減らし、脳内の酸化ストレスを軽減する効果があるのです(8)。また、2型糖尿病患者の認知機能低下を軽減する効果があることも分かっています(9)。
メトホルミンの服用方法

成人の場合、500mgのメトホルミンを1日2~3回に分けて服用します。服用するタイミングは、食直前または食後です。最終的には、効果を観察しながら1日750~1,500mgで服用量を維持します。
状態によって適宜服用量を増減できますが、1日の服用量が2,250mgを超えないようにしてください。
メトホルミンを服用する際は、医師の指示に従って用法用量を守ったうえで使用しましょう。
まとめ

メトホルミンは、無理なくダイエットができる薬として知られています。ダイエットに効果的なのは、以下の4つの作用があるためです。
- 過剰な食欲を抑える
- 満腹感を持続させる
- 糖分の便中への排泄を促進させる
- 筋肉量を増やす
特徴的なのは、筋肉量を増やす働きもあることでしょう。ダイエットしながら筋肉量を維持してくれるので、メトホルミンを使うとリバウンドしにくいと言われています。
メトホルミンは、寿命を延ばしたり新型コロナウイルス感染症の後遺症を予防する効果があることも期待されている薬です。
ダイエットでこれまでに何度も挫折してきた方、健康維持に興味がある方はメトホルミンの活用を検討してみてはいかがでしょうか。
参考文献
- Coll AP, Chen M, Taskar P, Rimmington D, Patel S, Tadross JA, et al. Metformin-induced increases in GDF15 are important for suppressing appetite and promoting weight loss. Nat Med. 2022;28(3):649?63.
- Zhang L, Xie P, Wang S, Liu Z, Pan J. Metformin improves skeletal muscle and physical capacity by stabilizing neuromuscular junction in older adults. Aging Cell. 2021;20(12):e13567.
- Knowler WC, Barrett-Connor E, Fowler SE, Hamman RF, Lachin JM, Walker EA, et al. Effectiveness of metformin on weight loss in non-diabetic individuals with obesity. Diabetes Care. 2002;25(3):485?91.
- De Silva VA, Suraweera C, Ratnatunga SS, Dayabandara M, Wanniarachchi N, Hanwella R. Metformin for weight reduction in non-diabetic patients on antipsychotic drugs: a systematic review and meta-analysis. BMC Psychiatry. 2016;16(1):212.
- Jarskog LF, Hamer RM, Catellier DJ, Stewart DD, LaVange LM, Ray N, et al. Metformin for weight loss and metabolic control in overweight outpatients with schizophrenia and schizoaffective disorder. Am J Psychiatry. 2013;170(9):1032-40.
- Barzilai N, Crandall JP, Kritchevsky SB, Espeland MA. Benefits of Metformin in Attenuating the Hallmarks of Aging. Cell Metab. 2016;23(6):1060-75.
- Tainwala R, Peiris AN. Study shows metformin lowers the risk of getting long COVID. J Med Virol. 2023;95(2):e28449.
- Wang X, Wang Y, Zhang X, Zhu Y, Wang X. Novel targets and therapies of metformin in dementia: old drug, new insights. Front Aging Neurosci. 2022;14:837468.
- Cheng C, Lin CH, Lane HY. Metformin mitigates dementia risk among individuals with type 2 diabetes. Alzheimers Res Ther. 2020;12(1):57.